フリーランス契約書ひな形の使い方【5項目で守る】

「とりあえず口頭で合意したからいいか」と思って進めたら、納品後に報酬を値切られた——フリーランスを続けていると、こういう話をリアルでもSNSでもちょこちょこ聞きます。ぼく自身も独立初期に1回やらかしました。この記事では、フリーランスの契約書ひな形をどう選んで、どう使えばいいかを5つのポイントに絞って解説します。

本記事の要約
・フリーランス契約書のひな形は無料で手に入る
・ひな形をそのまま使うのはNG。必ず5つの必須項目を確認すること
・契約書なしで仕事を始めると、報酬未払い・範囲外作業の押しつけリスクが高まる
・クラウド型ツールで電子契約にすると印紙税ゼロ・保管も楽になる
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タケPM

SIerからフリーランスPMへ転身。リモートワーク・転職・副業のリアルな話を体験ベースで発信しています。

そもそもフリーランスに契約書は必要なのか

「必要かどうか」を考える前に、結論から言うと、金額・納期・作業範囲が発生するなら必ず必要です。規模は関係ないです。

ぼくが独立して最初の半年、ありがたいことに知人のつながりで案件が来たんですね。で、「知人だし大丈夫でしょ」と思ってメールのやりとりだけで進めた案件がありました。作業は終わったのに「ちょっと追加でここも直してほしい」が3回続いて、最終的に当初の見積もりの1.5倍ぐらいの工数になった。正直、しんどかったです。

あれは完全にぼくの準備不足でした。業務委託契約書(フリーランスが企業や個人からの仕事を受けるときに結ぶ契約)さえちゃんとあれば、「この作業は契約範囲外です」とひとこと言えた。それだけの話なんですよね。

ポイント
契約書は相手を疑うためのものじゃないです。「何をどこまでやるか」をお互いが確認するためのもの。信頼関係がある相手ほど、ちゃんと書面にしておくほうが結果的に関係が続きます。

フリーランス契約書ひな形を無料で入手できる場所

ひな形を探すときに使えるサイトを紹介します。ぼくが実際に確認したことのある信頼性の高いところだけ挙げます。

① 内閣官房「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」

政府が公開しているガイドライン自体にひな形は含まれていませんが、契約書に含めるべき事項の法的根拠を確認できます。内閣官房フリーランス支援サイトに関連資料がまとまっています。

② 公正取引委員会・中小企業庁の標準契約書

経済産業省が公開しているITフリーランス向けの標準契約書ひな形があります。システム開発・デザイン・ライティングといった業種別にPDFとWordファイルで配布されています。無料でダウンロードでき、そのまま使える水準で整備されているのでぼく個人的にはここを一番おすすめしています。

③ フリーランス協会の契約書ひな形

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会でもスマホやPCで簡単な質問に答えるだけで、フリーランス法に完全対応した契約書を無料で作成できる新サービス「契約書メーカー」を提供しています。無料会員登録(メールアドレス入力のみ)で、無料会員登録だけで他にも割引や、IBM SkillsBuild/Udemyの使い放題など、たくさんのベネフィットがあり、労災保険にも加入できます。

④ クラウドサインなどの電子契約サービス

クラウドサインDocuSignといった電子契約サービスでも、業務委託契約のひな形テンプレートを提供しています。電子契約にすると印紙税が不要になる点もメリットで、収入印紙代(案件規模によっては数千〜数万円)を節約できます。

ひな形をそのまま使うのはNG。確認すべき5つの必須項目

ここが一番大事なところです。実際にやってみた話をします。最初にひな形をダウンロードしたとき、正直「これで完成」と思ってそのまま送りそうになりました。でもよく読むと、自分の案件に合っていない部分が結構あって。ひな形はあくまでスタート地点です。

以下の5項目は必ず自分の案件に合わせて書き直してください。

① 業務範囲(スコープ)

「何をどこまでやるか」を具体的に書くのが一番重要です。「Webサイトの制作」だけでは範囲が広すぎます。「〇〇ページのHTML/CSSコーディング(デザインデータはクライアントが用意)」のように、やることとやらないことを両方書くのがコツです。

注意
「その他付随する業務」という文言がひな形に残っていたら削除を検討してください。この一文が範囲外作業の根拠に使われることがあります。

② 報酬と支払い条件

金額だけでなく、「いつ」「どうやって」支払われるかを書きます。ぼくが使っているのはこのパターンです。

  • 報酬額:月額〇〇円(税別)
  • 請求タイミング:月末締め、翌月末払い
  • 支払い方法:銀行振込(振込手数料はクライアント負担)
  • 遅延損害金:支払い遅延の場合は年〇%

フリーランス保護新法(2024年11月施行)(フリーランス・事業者間取引適正化等に関する法律。発注側が書面での条件明示や60日以内の報酬支払いを義務づけられた法律)により、発注者側に書面での条件明示が義務づけられました。これが法的根拠になるので、支払いサイト(支払いまでの日数)が60日を超えるような契約はそもそも違法になり得ます。

③ 納期・スケジュール

「〇月〇日までに納品」だけではなく、クライアント側のフィードバック期限も入れておくと安心です。「納品後7営業日以内に修正依頼がない場合は検収完了とみなす」という一文があると、無限修正ループを防げます。これ、意外と大事で、ぼく自身も後から追加しました。

④ 知的財産権の帰属

成果物の著作権・所有権をどちらが持つかを明記します。ひな形によっては「納品と同時にクライアントに譲渡」が初期設定になっているものもあります。制作物を自分のポートフォリオに使いたい場合などは「著作者人格権は不行使」の範囲を確認して調整してください。

⑤ 契約解除・途中終了の条件

「どういう場合に契約を終了できるか」「途中終了した場合の報酬はどうなるか」を書きます。特に継続案件の場合は重要です。一般的には「1ヶ月前の書面通知で解除可能」という形が多いです。

  • 業務範囲(やること・やらないことの両方)
  • 報酬額・支払い日・振込手数料の負担
  • 納期と検収完了の定義
  • 知的財産権の帰属
  • 契約解除条件と途中終了時の報酬

契約形態別:どのひな形を選べばいいか

フリーランスの契約には大きく2種類あります。どちらを選ぶかで、ひな形の種類も変わります。

業務委託契約(準委任型)

準委任契約とは、「成果物を納品するのではなく、業務を遂行すること自体」を目的とした契約です。月額固定で稼働するPM・エンジニア・コンサルタント系の案件はほとんどこれです。ぼくの案件もほぼこれ。成果物の完成責任を負わないため、「作ったけど使われなかった」ときでも稼働分の報酬は請求できます。

請負契約

請負契約は、成果物の完成を約束する契約です。Webサイト制作・システム開発・デザイン制作など「納品物がある仕事」はこちらが多いです。成果物に問題があった場合、修正対応の義務(契約不適合責任)が生じるため、仕様の確定と検収条件の明記が特に重要です。

自分の案件がどちらに当たるかわからない場合は、「月額固定で稼働する→準委任」「成果物を納品して終わり→請負」と大まかに考えると判断しやすいです。

契約書の送り方・実務的な流れ

「契約書を出したい」とクライアントに言うのが気まずい……という話をフリーランス仲間からよく聞きます。正直、ぼくも最初はちょっと言いにくかったです。でも、送り方をうまくすれば全然問題ないです。

ステップ1:条件の口頭合意→メモ書きで確認

打ち合わせで合意した内容をメールやチャットでテキスト化して共有します。「〇〇という認識でよろしいでしょうか」という形で送るだけでOKです。これが後で契約書の骨格になります。

ステップ2:ひな形に内容を落とし込む

先ほどの5項目を中心に、ひな形の空欄を埋めます。難しい法律用語は変えなくていいです。業務範囲・金額・納期だけでも自分の言葉で具体的に書き直してください。

ステップ3:電子契約ツールで送付→署名

ここは紙よりも電子契約にする方が断然楽です。クラウドサインやDocuSignなどのサービスを使うと、メール一本で送れて、クライアントはブラウザ上でサインするだけ。印鑑・郵送・原本保管が全部不要になります。個人のフリーランスにはかなりありがたい仕組みです。

ポイント
クライアントに契約書を出すとき、「弊方(私側)でひな形を用意しますね」と一言添えると、相手の手間を減らせてスムーズに進みやすいです。「契約書出してくれ」より「ぼくが用意します」の方が話が早い。

契約書なしで仕事してトラブルになった話

実際にやってみた話をします。ぼくが独立して3ヶ月目のころ、前職のつながりで月30万の案件をもらいました。正直、ちょっとテンション上がりました。で、そのときぼくはメールだけで合意して進めたんですね。

案件は順調に進んだんですが、納品の直前に「ここの機能も追加してほしい」「説明資料も作って」と追加依頼が重なりました。断りにくくてやったんですが、後から試算したら当初の見積もりの1.3倍くらいの工数になっていた。でも「追加分は契約に含まれている」という認識をされていて、結局そのまま月30万で終わりました。

あのとき契約書に「作業範囲外の依頼は別途見積もり」と一行書いておけばよかった。それだけの話でした。今はどんな案件でも、金額がいくらであれ必ず契約書を用意してから作業を始めるようにしています。

よくある疑問:Q&A形式で答えます

Q. 個人相手(フリーランス同士)でも契約書は必要ですか?

必要です。むしろ個人間の方がトラブルになったとき解決が難しいので、きちんと書面化しておいた方がいいです。金額が小さくても同じです。

Q. クライアントから「うちのひな形でいい」と言われたらどうする?

クライアント側のひな形を使うこと自体はOKです。ただし、自分に不利な条項がないかを必ず確認してください。特に「著作権は発注者に帰属」「損害賠償の上限なし」「競業避止義務」の3点は注意ポイントです。気になる箇所があれば「この部分を修正したい」と交渉するのは普通のことです。

Q. 弁護士に頼んだ方がいいですか?

単価が高い案件や長期の継続契約なら、一度弁護士にレビューしてもらうのはありだと思います。法務クラウド弁護士ドットコムなどのオンラインサービスで比較的安価に相談できます。月10万以下の案件なら経済産業省のひな形をベースに自分でアレンジするレベルで十分な気がします。

Q. 秘密保持契約(NDA)は別に結ぶ必要がありますか?

NDA(秘密保持契約)とは、業務を通じて知り得た情報を外部に漏らさないことを約束する契約です。業務委託契約書の中に秘密保持の条項を入れるか、別途NDA単体として結ぶかどちらでも構いません。クライアント側から求められることが多いですが、こちらから出してもいいです。

経済産業省の中小企業庁では、秘密保持契約のひな形が無料でダウンロードできます。このページでは他にも「知的財産権等の取扱いに関する契約(開発委託契約)書」や、「共同開発契約書 」のひな形がダウンロードできるので、必要になりそうな人はブックマークがおすすめです。

まとめ:契約書ひな形を使う流れをおさらい

長くなりましたが、ポイントを整理します。

  • ひな形は経済産業省や電子契約サービスの無料テンプレートから入手できる
  • ひな形はそのまま使わず、業務範囲・報酬・納期・知財・解除条件の5項目を必ず書き直す
  • 契約形態は「準委任(稼働型)」か「請負(成果物型)」かを確認して合ったひな形を選ぶ
  • 電子契約ツールを使うと印紙税ゼロ・郵送不要で実務がかなり楽になる
  • クライアント提示のひな形は著作権・損害賠償・競業避止の3点を重点確認する

ひな形を準備するのは最初だけ手間がかかりますが、1回作ってしまえば次からは使い回せます。まず経済産業省のサイトからひな形をダウンロードして、自分の案件に当てはめてみるところから始めてみてください。

この記事を書いた人 タケPM

タケPM

新卒でSIerに入社後、Web系企業への転職を経て、現在はフリーランスのプロジェクトマネージャーとして複数の案件を掛け持ちしています。リモートワーク歴は5年以上。転職・フリーランス転向・リモートワークと、自分が経験してきたことをそのまま書いています。きれいに整理された情報より、泥臭いリアルを優先して発信するのがモットーです。

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